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済州島日記・8月29日 その3 [旅行記]

8月29日 3回目

※この3回目は、舞台の裏側というより、公演中の役者の裏側を書いてます。


ご飯を食べて、着替えたら、考える暇もなく本番。
客席の数を数え損ねたが、100席は超えていたと思う。

客席の間で出番を待つ。
お客さんがゾロゾロと入ってくる。
椅子が足りなくなり、ミランオンニが増席している。
三方を囲まれていた舞台が、ちょっとキュッと小さくなる。

さすがに衣装を着ているので、お客さんは私を放置してくれる。
やっと独りになれたのかもしれない。

スタート。

柴ちゃんと民樹が挨拶に立つ。
金君が、お客さんに宛てて書いた手紙を、柴ちゃんが読み、民樹が訳す。
私は目線を落として、ずっと手を合わせていた。

つくづく私は日本人だな。
お寺の孫娘が染み付いてるな。

そうやって意識を集中しながら、
この姿、お墓に手を合わせてるみたいやなぁと自分につっこんだりしていた。

手紙の中で、我々のことを説明している。
10人でやったこの芝居を、今回は8人でやります。
うち、6人は日本人です。
彼らは強制されたのではなく、すすんで一生懸命言葉を覚えて来ました。
皆さん一緒に楽しんで下さい。
4月とは違い、金君の言葉に涙が出ることはなかった。
ま、泣いてる場合でもない。

やがて拍手の中、民樹がハケて、柴ちゃんが一人、語り始める。
お客さんはとても好意的に柴ちゃんと、続いて現れたジャッコの台詞を聞いている。

ここから先は、出演していたので、冷静に書き綴ることはできないかな。
(役柄上、前半終わってハケてきたら、二度と袖には戻らなかったので・・・)

簡単に書こう。
前半の歌を歌うシーン、済州島のお客さんはノリが良かった!
積極的に歌に参加してくる。
こんなに皆ニコニコしてるのに・・・やがてパラ(銃声)がこの空気をぶっ壊すんだけど。
パラが会場内に響き渡った瞬間、客席が静まる。
狙ったとおりの効果があったみたいだ。

着替えて「晴美」となる。
舞台の上で、海を眺めるように客席を眺める。
食い入るように見てくれているのが分かる。
ここから先は日本語だ。
我々はどこまで勝負できるのか?

「晴美」になってからは、もう役者「木場夕子」は意識下にある。
いなくなるわけじゃないけど、晴美の邪魔をすることはない。

役者の背後にある意訳された字幕と、ステージを交互に見てくれているのがわかる。
字幕のお姉さんの為にも、なるべく丁寧に台詞を言う。

「晴美」は、日本では「お客さんの延長上」にいる人物だ。
在日の方にとっても、日本人にとっても。
それは、晴美がどちらの要素も含む近しい人物だからだ。

それが済州島では、お客さんにとって「身近にいない人」に逆転する。
彼女をどう受け止めるんだろう?

最終、済州島のシーン。
愛淑がいないので、海女役は民樹と京枝の二人だけだ。

演出の金君の想像通り、済州島のお客さんは、
晴美に向かって、海女と一緒になって歌い出した。

「歌え」と言われる晴美がステージ上で、いや済州島で一人ぼっちになった。

それは想定していたより、はるかに大きいうねりで、
意識下のはずの自分までもが「うわぁ・・・」と心動く。

Vi-codeの時より、もっと本能的な部分で涙が出た。
芝居って、追体験だと思うけど、今回のはリアルだ。

民樹の歌がいつもより上ずっている。
きっと、このうねりに皆もぐっときてしまったのだと思う。
それをきっかけに冷静になった。
最後まで丁寧に丁寧に・・・。

暗転が明けて、拍手の中で挨拶。
さっきまでボロボロ泣いていたが、それは晴美。
木場夕子は笑っていた。
もちろん終わった、という安堵もあったけど、さっきまでのは「お話」だから。

長短の中、パラをケンガリに持ち替えて、サンイッさんが場を盛り上げる。
お客さんもぞろぞろとステージに出てきて踊ってくれた。
作品が昇華する、ってのはこういう事かもしれない。


全てが終わって、さあ片付けようという時に、知り合った沢山の人に話しかけられる・・・
衣装のまま笑顔で答えると、皆、私を見て泣いてしまう。
どうやら「晴美」に何て言ったらいいのか、わからなくなっている様だった。

済州島の方々が、今日の在日の方々を思って流した涙だと思った。

そんな余韻の残る会場で、関係者の皆さんが、手早く撤収を始める。
出演者が、それぞれお客さんと話をする間に、撤収は着々と進み、
着替えも済ませてない我々が、最後に残った。
「早く、早く!」
皆、とりあえずカバンに突っ込む。

この後は、大打ち上げ大会。
どう考えても朝までコース。

写真は、直前に知り合ったキン イルシッさんから航路-ハンロ-に頂いたお花。
いいともみたい!と言ったのは民樹。
NEC_0135.jpg

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